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我が家の家庭教師体験記|2人の子どもで学んだ成功と失敗

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家庭教師選びに、今まさに頭を悩ませているお母さん、お父さんへ。

「うちの子に合う先生って、どうやって探せばいいの?」
「高いお金を払って失敗したくない…」
「そもそも、家庭教師をつけるだけで本当に成績は上がるの?」

そのお気持ち、痛いほどよく分かります。

こんにちは、教育コンサルタントの田中美咲です。
元中学校の数学教師で、今は年間50件以上の家庭教師に関するご相談に乗っていますが、何を隠そう、私自身が2人の子どもの家庭教師選びで、大きな成功と手痛い失敗の両方を経験した母親の一人なのです。

高校2年生の長男・翔太が中学時代に数学でつまずいた時。
そして、中学1年生の長女・あかりが英語に苦手意識を持った時。

教師として、そしてコンサルタントとしての知識はあっても、いざ我が子のこととなると、本当に悩みました。

この記事では、有名大学という学歴だけで先生を選んで失敗した長男のケースと、その反省を活かして大成功だった長女のケースを、包み隠さずお話しします。

これは、どこかの立派な教育論ではありません。
一人の母親が、我が子と必死に向き合った「リアルな体験記」です。
この記事を読み終える頃には、あなたのご家庭に合った家庭教師選びの「確かな軸」が見つかるはずです。

長男・翔太のケース:最初の家庭教師でのつまずき

今でこそ笑い話ですが、長男・翔太の最初の家庭教師選びは、正直なところ「失敗」でした。
当時の私は「せっかく頼むなら、教え方が上手な先生を」と、理想ばかりを追いかけていたように思います。

学歴だけで選んだ最初の先生

最初に翔太の数学をお願いしたのは、誰もが知る有名大学に通う男子学生でした。
家庭教師センターの方からも「指導経験も豊富で、特に数学が得意な優秀な学生さんですよ」と太鼓判を押され、私も「この先生なら間違いない」と期待に胸を膨らませていました。

当時の私は、こんな風に考えていたんです。

「自分が数学で苦労したことがない優秀な先生なら、きっと息子がどこでつまずいているのか、すぐに見抜いてくれるはずだ」

今思えば、これが最初の間違いでした。
学歴や指導力というスペックばかりに目がくらみ、肝心なことを見落としていたのです。

相性が合わずに続かなかった理由

最初の1ヶ月、翔太は真面目に指導を受けていました。
しかし、宿題には渋々取り組むようになり、だんだんと表情が曇っていくのが分かりました。

ある日、翔太がポツリとこう言ったんです。
「先生、頭が良すぎて、なんで俺が分からないのかが分からないみたい…」

その先生は、決して悪い方ではありませんでした。
ただ、真面目で少し内気な性格の翔太にとって、論理的でスマートに進めていく先生の指導スタイルは、質問をする隙を与えない「息苦しさ」を感じさせてしまったようです。

  • 分からない点を「分からない」と言い出せない雰囲気
  • 先生の期待に応えなければというプレッシャー
  • 勉強以外の雑談がほとんどない、緊張感のある90分間

これでは、成績が上がるはずもありません。
結局、親子で話し合い、3ヶ月で先生を交代していただくことになりました。

親として感じた「期待」と「現実」のギャップ

正直、焦りました。
「高い月謝を払っているのに…」という気持ちがなかったと言えば嘘になります。

家庭教師をつければ、魔法のように成績が上がる。
そんな風に、どこかで過度な期待をしていた自分に気づかされました。

子どもがやる気になるかどうかは、先生の指導力だけでは決まらない。
子どもと先生の間に、人としての信頼関係が築けるかどうかが、何よりも大切なんだと痛感した出来事でした。

学び:相性の大切さと親の見極め力

この失敗から私が学んだのは、家庭教師選びにおける最も重要な教訓です。

それは、「完璧な家庭教師はいない、相性が一番大切」ということ。

親が「良い先生」だと思う先生と、子どもが「良い先生」と感じる先生は、必ずしも同じではないのです。
私たちはつい、学歴や実績といった分かりやすい指標に頼ってしまいますが、それ以上に子どもの性格や気持ちに寄り添う視点が必要不可欠でした。

長男・翔太のリベンジ編:成功につながった選び方

最初の失敗をバネに、私は家庭教師選びの基準を180度変えました。
「親の期待」ではなく、「息子に合うかどうか」という、たった一つの基準に絞ることにしたのです。

2人目の先生は「地元国立大の自然体な学生」

次に紹介していただいたのは、地元の国立大学に通う、サッカーが趣味だというお兄さん先生でした。
最初の先生とは対照的に、少し日焼けした、気さくで話しやすい雰囲気の学生さんです。

体験授業の時、彼が翔太に言った言葉が忘れられません。
「俺も中学の時、数学全然分からなくてさ。部活ばっかりやってたよ。でも、ちょっとしたコツを掴んだら、急に面白くなったんだよね」

この一言で、翔太の目の色が変わったのを、私は見逃しませんでした。
「この先生なら、自分の気持ちを分かってくれるかもしれない」
そう感じたのでしょう。

勉強嫌いから前向きに変わったきっかけ

新しい先生は、教え方が劇的に上手いというわけではなかったかもしれません。
でも、翔太との「距離の縮め方」が本当に絶妙でした。

  • 勉強を始める前の5分間は、必ずサッカーや好きなゲームの話で盛り上がる。
  • 翔太が問題を解いている間は、じっと辛抱強く待つ。
  • 難しい問題に直面した時は、「うわ、これムズいな!一緒に考えてみようぜ」と、同じ目線に立ってくれる。

先生が来てくれる日は、翔太にとって「勉強をやらされる日」から「好きな先輩が遊びに来てくれる日」に変わっていきました。
先生との雑談がしたくて、その日の宿題をきちんと終わらせるようになったのです。
これには本当に驚きました。

半年間で20点アップ!継続の力と信頼関係

変化はゆっくりでしたが、確実でした。
先生が来てくれるようになって3ヶ月が過ぎた頃から、翔太は自分から机に向かうようになり、学校の小テストの点数が少しずつ上がり始めました。

そして半年後。
あれだけ苦手だった数学の定期テストで、なんと平均点を20点も上回る点数を取ってきたのです。

翔太が答案用紙を少し照れくさそうに、でも誇らしげに見せてくれた時の顔は、一生忘れられません。
点数以上に、彼が取り戻した「自信」が、親として何より嬉しい成果でした。

学び:「子どもの性格に合う先生」を選ぶという視点

翔太のケースから学んだのは、子どもの性格に合った先生を選ぶことの重要性です。

うちの翔太のように、少し引っ込み思案で、自分の意見を言うのが苦手なタイプの子には、ぐいぐい引っ張っていく指導者タイプよりも、少し年上の「頼れるお兄さん」のような、共感してくれる存在が合っていたのです。

もしあなたのお子さんが家庭教師を始めるときは、ぜひ「どんなタイプの大人と話しやすいか」という視点で先生を探してみてください。

長女・あかりのケース:英語苦手克服の軌跡

長男の経験があったので、中学1年生の娘・あかりの家庭教師選びは、少し落ち着いて進めることができました。
あかりの場合は、小学校から苦手意識があった「英語」が課題でした。

「英語は嫌い!」から始まった家庭教師選び

あかりは活発で、思ったことをはっきり言うタイプ。
その分、一度「嫌い」となると、てこでも動かない頑固さも持っています。

中学校に入り、本格的に始まった英語の授業に早々についていけなくなり、「英語なんて、将来使わないし!」と、すっかり心を閉ざしてしまいました。

そこで私は、翔太の時の学びを活かし、あかり本人にどんな先生がいいか、じっくりヒアリングすることから始めました。

女性の大学院生との出会いが転機に

あかりの希望は、明確でした。

  1. 絶対に女の先生がいい
  2. 怖い先生は嫌だ
  3. できれば、おしゃれな話とかもできる人がいい

そこで家庭教師センターに相談し、紹介していただいたのが、大学院で国際文化を学んでいる女性の先生でした。
海外留学の経験もあり、とても穏やかで、笑顔が素敵な方でした。

体験授業の日、先生は勉強の話に入る前に、あかりが好きなアイドルの話や、最近流行っているファッションの話をたくさんしてくれました。
あかりが、あんなに楽しそうに初対面の大人と話しているのを見たのは、久しぶりでした。

「お姉さんみたい」な存在が与えた安心感

先生との指導が始まってから、あかりの英語への態度は明らかに変わりました。
先生は、教科書を教えるだけではありませんでした。

  • 好きな洋楽の歌詞を一緒に和訳してみる
  • 海外のファッション雑誌を見ながら、簡単な英会話をしてみる
  • 留学中の面白い失敗談を話してくれる

あかりにとって先生は、勉強を教わる相手というより、「憧れのお姉さん」のような存在になっていったのです。
「先生みたいに英語が話せたら、海外旅行ももっと楽しいかも」
そんな風に、少しずつ前向きな気持ちが芽生えていきました。

学び:性別・年齢も「相性」の一部

あかりのケースでは、先生の性別や年齢が、相性を決める大きな要因になりました。
多感な時期の女の子にとって、同性の先生が与えてくれる安心感は、想像以上に大きいものがあります。

もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
しかし、学力や指導スキルといった要素だけでなく、性別や年齢、趣味といったパーソナルな部分も、子どもにとっては重要な「相性」の一部なのだと、改めて気づかされました。

成功と失敗から見えた家庭教師選びのポイント

長男と長女、二人の対照的な経験を通して、私なりに見えてきた家庭教師選びのポイントがあります。
今まさに悩んでいる保護者の方に、少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。

【失敗例から】やりがちな選び方とその落とし穴

まずは、うちの翔太のケースで私がやってしまった失敗です。
これは、多くのご家庭が陥りがちな落とし穴でもあります。

  • 落とし穴1:学歴フィルターで選ぶ
    「有名大学=良い先生」とは限りません。 大切なのは、お子さんの学力レベルや性格に合わせて、根気強く教えてくれるかどうかです。
  • 落とし穴2:親の価値観を押し付ける
    親が「この先生は素晴らしい」と思っても、子どもが心を開かなければ意味がありません。主役はあくまで子どもです。
  • 落とし穴3:「お任せします」と丸投げする
    家庭教師は万能ではありません。 家庭での様子を伝えたり、先生からの報告をしっかり聞いたり、親の関わりがあって初めて効果が最大化します。

【成功例から】「相性を見る」ためにできる工夫

では、どうすれば「相性の良い先生」に出会えるのでしょうか。
我が家で実践した、いくつかの工夫をご紹介します。

  1. 体験授業は必ず受ける
    これは絶対です。 30分でも1時間でも、実際に子どもと先生が話している様子を自分の目で見てください。子どもがリラックスできているか、質問しやすそうか、表情をよく観察しましょう。
  2. 事前に子どもと「作戦会議」をする
    「どんな先生がいい?」と漠然と聞くのではなく、「優しいお兄さんタイプと、面白いお姉さんタイプ、どっちがいい?」など、具体的に希望を聞き出します。
  3. 家庭教師センターに具体的に伝える
    作戦会議で出た希望は、遠慮なくセンターの担当者に伝えましょう。「サッカー部の経験がある先生」「留学経験のある女性の先生」など、具体的なリクエストが、良いマッチングに繋がります。

家庭教師に期待しすぎない心構え

これは自戒も込めてですが、家庭教師をつけたからといって、すぐに成績が上がるわけではありません。
子どもの心が動き、学習習慣が身につくまでには、少なくとも3ヶ月はかかると考えておきましょう。

「すぐに結果が出なくても、焦らない」

この心構えが、親にとっても子どもにとっても、余計なプレッシャーを減らしてくれます。
長い目で見守ってあげることが、実は一番の近道だったりするのです。

実は盲点?子ども本人の気持ちの聞き方

「家庭教師、どう?」と聞いても、子どもはなかなか本音を言わないものです。
特に、親が選んだ先生だと「悪いって言いにくいな…」と気を遣ってしまいます。

そんな時は、少し聞き方を変えてみてください。
「先生の、どんなところが好き?」
「最近、先生とどんな話したの?」

勉強以外の話から入ることで、子どもはリラックスして、先生との関係性を話してくれることがあります。
そこから、本当の相性が見えてくることも多いですよ。

家庭教師との関係を続ける中で得たこと

家庭教師の先生との出会いは、単に子どもの成績を上げるだけでなく、我が家にたくさんのポジティブな変化をもたらしてくれました。
これは、教師時代には見えなかった、嬉しい発見でした。

子どもとのコミュニケーションが変わった

家庭教師の先生という「第三者」が入ってくれたことで、私と子どもたちの関係にも良い変化がありました。

以前は私が「勉強しなさい!」と一方的に言うばかりでしたが、先生から「お母さん、翔太くん、最近すごく頑張ってますよ」と聞くと、私も「そうなんだ、すごいね!」と素直に褒めることができるようになりました。
親子間の潤滑油のような役割を、先生が担ってくれたのです。

勉強以外に得られる「自信」と「習慣」

特に長男の翔太は、信頼できる先生との出会いを通して、勉強への苦手意識だけでなく、自分自身への自信を取り戻してくれました。

「やればできる」という小さな成功体験の積み重ねは、学校生活全般に良い影響を与えてくれたように感じます。
また、週に一度、決まった時間に先生が来ることで、生活リズムが整い、学習習慣が自然と身についたのも大きな収穫でした。

親としての「任せる勇気」と「見守る姿勢」

正直なところ、最初は「先生はちゃんと教えてくれているだろうか」と不安になることもありました。
でも、子どもたちの表情や言葉を信じて「任せる」と決めてからは、私自身の気持ちがとても楽になりました。

親がやるべきことは、先生の指導に細かく干渉することではなく、子どもが気持ちよく勉強できる環境を整え、頑張りを認め、励ますこと。
そんな「見守る姿勢」の大切さを、二人の家庭教師の先生から教えてもらいました。

教師時代には見えなかった「家庭側のリアル」

中学校教師として働いていた頃、私は保護者の方に「ご家庭でも、もっとお子さんの勉強を見てあげてください」なんて、簡単に言っていました。
今思えば、本当に恥ずかしい限りです。

仕事や家事に追われる中で、子どもの勉強にじっくり付き合うことが、どれだけ大変なことか。
親自身も、不安や焦りと戦っていること。
自分が親になって初めて、その「リアル」が分かりました。この経験は、今のコンサルタントとしての仕事にも、深く活きています。

まとめ

長男・翔太の失敗と成功、そして長女・あかりの苦手克服。
我が家のドタバタな家庭教師体験記が、皆さんの先生選びのヒントになれば、これほど嬉しいことはありません。

最後に、私が2人の子どもを通して学んだ、たった一つの真実をお伝えします。

それは、家庭教師選びとは、「相性」という名の、たった一人のパートナーを探す旅だということです。

  1. 失敗から学ぶ
    最初の家庭教師選びは、うまくいかなくて当たり前。大切なのは、その経験から「我が子に合うのはどんなタイプか」を学ぶことです。
  2. 主役は子ども
    親の理想ではなく、子どもの気持ちを最優先に考えましょう。「この先生となら頑張れそう」と子どもが感じることが、すべての始まりです。
  3. 完璧じゃなくて最善を
    完璧な先生はいません。でも、あなたのお子さんにとって「最善の先生」は必ずいます。焦らず、じっくり探してあげてください。

家庭教師選びは、本当に悩みますよね。
でも、その悩む時間こそが、お子さんと真剣に向き合っている何よりの証拠です。

この記事が、あなたの「パートナー探しの旅」で、道に迷った時の小さな道しるべになることを、心から願っています。